シリア情勢――終わらない人道危機



【全体的な流れ】
サブタイトルに「人道危機」とあり、また帯には犠牲者の数が書かれていますが、
全体的には被害状況などよりも、政治・地政学等マクロな問題を扱った本です。
街の被害や難民の状況などは、あまり解説されません。
しかし、複雑なシリア情勢を、段階別にわかりやすく解説した本かとは思いました。

応仁の乱の本を読み、また第一次世界大戦について勉強していると、
この本で扱われるシリア内戦との共通点も見えてきました。

【主体の不在】
アサド大統領も、マスコミや他の書籍のイメージ程は無能ではなく、
政権側としても一応の沈静化対策はしているように感じました。
ただし、日露戦争の伊藤博文や普墺・普仏戦争のビスマルクに比べると
やはり戦争の主体にはなれていないと思われます。
この辺が、足利義政に近いかと。
これは他の国や組織にも言え、「どうやって終わらせるか」を
きちんと考えて戦っている人がいないのではと、本書で改めて思いました。
応仁の乱も第一次世界大戦も、皆終戦のイメージを持たずに暴れ始めて、
収集がつかなくなった戦争ですし。

それと、国や政権など、マクロのしぶとさというのは、なかなか見極めが
難しいと言うことも改めて考えさせられました。

【ロシアの立ち回り】
帝国時代には日本に負け、第一次世界大戦でつぶれた国ですが、
そんな国を再び偉大な帝国にしようとするプーチン政権。
アサド政権の要請に応じての空爆や、国際会議での立ち回りなど、
外交面でも美味しい所をとっているように感じました。

【シリアのその後】
中東本をたくさん書いているイメージの内藤正典さんが方々でコメント
されていましたが、2017年4月にシリアで化学兵器が使用されました。
また、トランプ大統領も空爆に踏み切っています。
本書は3月発行の為、こちらは間に合わなかったようです。
これによってアサド政権の中東内でのメンツも変わってくると思いますが、
これは著者の青山さんや、他では内藤さんの本を待たなければいけなそうです。

化学兵器の使用が本当にアサド政権側ならば、プーチン大統領のメンツも
潰したことになりますし、油断が出来ません。
一方、トランプ大統領が、またアメリカ合衆国の株を下げなければ良いが
とも思えますね。
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シリア難民 人類に突きつけられた21世紀最悪の難問

【遠い夜明け】
難民問題が叫ばれて久しい中、ある父親がスウェーデンで難民登録をするまでの話です。
それと平行して、アフリカ難民の話もあります。
どちらも、社会や国家が助けてくれないため、というか国家とテロ組織から平等に虐待されるため、
難民としてヨーロッパを目指す過程が紹介されます。

シリアやイラクでの停戦後も、難民自体は減らない可能性もあるとのことで、今後も世界が考えるべき問題でしょう。

【止まらぬ流入】
インターネットの普及に伴い、あるルートを閉ざしても、別のルートが開拓され、瞬時に共有される流れが出来上がっているようです。
海路は言わずもがな、陸路も山あり谷ありのアジア・ヨーロッパの境を取り締まり切るのは不可能。

一方、人口も多く、特定のモノに依存しない経済を持つヨーロッパの不手際が語られます。
日本と違って中東やアフリカに揉め事の種を蒔いたヨーロッパが御託並べているのは滑稽です。

【非合法な密航業者】
筆者さんが集めたのは難民の声だけでなく、密航業者へのインタビューもあります。
短いですが、インタビューに至る苦労も紹介。

私腹を肥やす奴らがいる一方、現場には本人も難民である密航業者な場合もあるそうです。
考えてみれば、非合法な組織の末端は、他に行くところの無い人間になるので、中東やアフリカでは難民なのでしょう。
日本のように、ニートにしておくのは、経済的・文化的に合わないのでしょうし。
ISの戦闘員になる人もそうですが、経済的な事情で非合法な組織に協力せざるを得ない場合は多そうです。

粗悪な救命胴衣を売る業者もいるなど、人道危機です。
しかも、非合法な組織が儲かっても、国の財政は上がらないという悪循環があるようです。

【何故難民になるのか】
難民になる側も、ヨーロッパまでの道のりは厳しく、辿り着いても差別偏見に晒されることは、理解している。
何故そこまでと言えば、テロ組織だけでなく、自国の軍隊や警察から追われ、また真面目に働いても儲からないから。
似た仕事をするなら時給がいい所となりますし、10倍以上時給に差があったら、多少非合法で危険なことでもやる人は増えるでしょう。
黙っていても殺されるなら、逃げます。それが普通のリアクション。
この本を読んで、難民になる人もやはり人間であると改めて感じました。

アメリカを見れば世界がわかる

【第一章 日米関係の歴史と現在】
 GHQの戦後処理から、オバマ大統領の広島訪問、南スーダン派兵等、
 最近の事柄までの日米関係の流れが解説されます。
 戦後のアメリカ側の支援等を見ると、日本は冷戦の漁夫の利で復興できたのではと考えさせられます。
 最近の軍事同盟がらみでは、「防衛装備の移転」と言葉のマジックでお茶を濁す等、戦後のから
 変わっていないようですね。(戦前も「戦争じゃな、事変だ!」というのはありましたが)
 思いやり予算や、日本の防衛費等、特にアメリカ大統領以後確実に問題になる問題も提起されます。
 やはり日本の近隣諸国を考えると、「国防費」の増額とその為の財源確保は必至と言う事でしょうか。

【第二章 シェール革命のインパクト】
 産油の歴史と、シェール革命以後の流れが、インタビュー等を交えて紹介されます。
 どこの国でも重要な戦略物資な上、元々強国だったアメリカがそれを輸出できることになるので、
 旧共産圏や中東の産油国にとってはかなり痛手のようです。
 特に、ソ連崩壊から復興を目指すプーチン大統領には頭の痛い話題になりそうです。
 (そのせいでか、ロシアでは与党の支持率も下がったようで)
 TPPとシェールオイルの関係も解説されましたが、当のヒラリーさん、トランプさんが
 乗り気でないので、その辺が大統領選後どうなるかも解説してほしかったです。

【第三章 銃満社会】
 銃に対して良く言えば寛容、悪く言えば放任なのがアメリカです。
 子ども用ライフルは、少し前のTV番組でも紹介されましたが、
 スーパー戦隊風でもなく、プリキュア的なパステルカラーだったのが逆に恐かったです。
 弱者が身を守るのは重要ですが、犯罪者が持つと余計に危ないという感覚は無いようです。
 購入・登録後も定期的に所持・廃棄・譲渡等を確認するとか、犯罪者にわたらないようにする
 手段はありそうなものですが。

【第四章 移民達のユートピア】
 少なくとも国境を越えてやってくる人々にとっては、アメリカはより良い生活を約束する
 ユートピア。身重でも移民として渡米する等、余程の希望なのでしょう。
 その辺はおそらく建国以降そうなのでしょうが。
 移民については、シェール革命に比べると、移民と銃はどちらが大統領になるかで
 大きく変わりそうです。
 ヒスパニック系は、既存のアメリカ人に比べて出生率も高いようで、
 マイノリティではなくなりそうだという予想もあるようです。
 (これは、欧州におけるイスラム系移民にも言えるようですが)

【第五章 不人気投票選挙】
 ニュースでも、毎週のように支持率の変動が告げられますのでホットな話題です。
 しかも、「問題を起こして支持率が下がる」というマイナス競争。
 ヒラリーさんは、基本的にオバマ大統領を踏襲すると思いますが、問題はトランプさん。
 元々、「他の人が言いたいけど言えない事を、堂々と言ってくれる」というのはありましたが、
 テッド・クルーズさんとの政策案比較を読みますと、「既存のものをやめただけ」に
 なってしまうのではという不安が出てきます。(日本の民主党政権みたいな感じで)
 
 いずれにしても、日本は無関係でいられませんので、より主体的な国家を考える時なのかもしれません。

イスラームとの講和 文明の共存をめざして (集英社新書)

【序章・欧州の白愛主義】
 ムスリムが感じる欧州での疎外感と、
 その原因である「自由・平等・博愛」の理想と現実のかい離が紹介されます。
 欧州側、特にフランスは革命の流れでそれを守ろうとしますが、
 あくまで白人の中での平等であって、ムスリムは同化が前提。
 しかし、同化を強要されればされるほど、信仰を強めるという悪循環です。

 「テロ」という言葉についても、なかなか興味深い話かと思います。
 個人的には、政治目的なんだから平等に「テロ」とよ呼べばいいんじゃないかと
 思いましたが。

 「対話ではなく講和」もやはり一理ある考え方だと思います。
 明治の日本のように自分から欧米の文化・文明を学ぼうとしたのではないの
 ですから、きちんと妥協点を見つけて講和をしなければならないと。

【第一章・なぜ人は難民になるのか】
 わざわざ遠い国まで逃げるのはそれなりの理由がありますが、
 シリアについていえば「自国の政府に殺される」というのが大きいようです。
 過去の歴史として、シリアを初めイスラム諸国が難民を多く受け入れていたとは
 知りませんでした。イスラムというと過激派が強調されがちですが、
 この辺のことも理解しておかなければいけないと思います。

 「客」の考え方にも、西洋人とは違った価値観というか、信念を感じます。
 タリバンがブッシュのアメリカに睨まれても、なぜアルカイダを売らなかったか。
 また、日本人には理解しづらいのですが、イスラムの商業観もあります。
 カッパドキアのエピソードは、それが解り易いかと。
 
 そして、一章の最後では、「難民とIS」の関係が紹介されます。

【第二章・新帝国乱立と民主主義の限界】
 この章の前半は、新帝国・新覇権国家の紹介。こちらは他の書籍やNHKスペシャル
 でも散々紹介されているので、特筆することはないかと。

 重要なのは、後半の宗教・民族と民主主義の関係。
 シリアの歴史と併せて、シリアに民主主義を導入したらどうなるかという事が
 解説されます。移民国家の米国や、何百年も決まった土地に住んでいた欧州、日本とは、
 状況がまるで違うと理解するべきですね。 まあ、それも白人の皆さんが勝手に国境線を
 引いたから、自分たちも制御できなくなっているんですけれども。
 というかイラクで失敗しているのに民主主義をゴリ押しする識者がいるのが何とも・・・

【第三章・イスラム世界の中心は?】
 最初の方は「西欧の価値観=絶対悪」のような論調。歪が出てるのは事実ですが・・・
 ただ、システム上の問題なのか、政治家・テロリスト個人の問題なのかというのを
 見極めるべし、とい指摘は大切なことだと思いました。
 
 誰がスンナ派の主体になるかという点については、
 「エルドアンのトルコ」とのことです。(この本が書かれた後にクーデターも起きていますが)
 地理的にも、政治的にも、また学問などの交流等でも他のアラブ諸国よりは、
 欧米諸国ともバランスがとり易そうです。

 後半の難民受け入れの話は、内容は理解出来ますが、空間的・経済的には難しいのでは
 ないかと思いました。話し合って妥協点を見つけるべき内容とは思います。

【第四章・日本の役割】
 日本の役割と言っても、本に書かれていることは基本的に安倍政権への文句です。
 確かに正論ではありますし、国民側も安倍さんの言動で気を付けて見なければいけない
 事柄ではありますが。
 法学や地政学については、きちんと勉強しないといけませんね。

 しかし、折角イスラム側の意見をという対談の場なので、
 「イスラムとして、日本には是非ともコレをやってほしい」というのが
 あればとも思いました。

 イスラエルは、こういう人達の本では絶対悪ですね。
 ただ、イスラムと講和するのであれば、ユダヤとも講和しないといけないとも思います。

戦争の社会学 はじめての軍事・戦争入門 (光文社新書)

「はじめての」とタイトルにある通り、戦争や軍事を解り易く解説した本です。
全体的な流れや知識については、世界史の授業で習ったことが多いと思います。
ただ、古代・中世・近世・近代における戦争のあり方や、日本と欧米の違い、
色々な用語等の曖昧な所を、軍事の古典等を参考に明確化できます。

【戦争の定義】
「暴力によって相手に自分の意見を押し付ける行為」とあります。
あくまでも、暴力は手段であって、目的ではないわけですね。
また、国家間の暴力でも「事変」というのは何故使い分けられるのかも解説されます。

【古代の戦争と中世の戦士】
二章と三章はあくまで歴史の知識という感じです。
地政学等から、日本の中世と欧州の中世、中世の無い他の地域の比較などは面白いと思います。
さらに、四章では、銃と大砲の登場で、中世の騎士から、近世以降の軍隊、
そして近代以降の国民軍までが解説されます。
そういえば、ハンニバルは敵に同じ戦術を採られると弱かったと言われますが、
ナポレオンや日本軍もそうで、これは普遍的と考えさせられました。
また、ナポレオンの頃から、欲しい物を奪う戦いではなく、イデオロギーを押し付ける戦いが始まった事も
紹介されます。

【国際法と戦争論】
五章から七章は、国際法と戦争論各々の古典と、それらを噛み砕いた説明です。
書いた人の人生や書いた目的等も紹介されます。
西洋人が作った物が今の世界にも影響を与えているとは凄いことでしょうが、
最近はその歪みも出ているように感じます。

【ドイツ帝国と参謀】
ビスマルクと言えば鉄血宰相など好戦的なイメージがありますが、
祖国の為に国家戦略・軍事戦略を考えていたと思わされます。
最新式の交通手段を積極的に取り入れることは、後のナチスドイツには踏襲出来ていたわけですね。
モルトケの戦略を各国がこぞって真似ようとする中、日本は明治維新直後にもかかわらず取り入れようとするなど、
昔は国際情勢を理解し、役立てようと努力していたんだと分かります。

【世界大戦の変遷】
WW1は、国民国家同士の戦争で、さらにWW2では前線と後方の区別が無くなるという流れが紹介されます。
内容的には、歴史の教科書レベルに、戦術の話を加えた程度かと。

【日本軍の失敗】
極力筆者の主観を排し、当時の世界標準と、日本のシステムや戦闘マニュアルの差が解説されます。
同盟国ドイツの電撃戦、WW1の塹壕戦や、ナポレオンの失敗から何も学ばず、精神論と毒ガスに頼る陸軍の様子が、
具体的資料から分かります。
当時の国際法をいい加減に扱ったことも、アメリカの参戦ムードを高めてしまったようです。
また、捕虜になる事も、中途半端な武士道精神からか遠ざけて死ななくても良い兵士を死なせたりという
愚も犯しているとは。(捕虜になる事は不名誉どころか裏切り、というスターリンよりはマシかもですが)

【21世紀の戦争】
日本のように自分から欧米化しようとした国ならば、欧米が決めたルールに従うのも分かりますが(変な所でズラして失敗しましたが)、
イスラム世界には通用しません。
やはり、ISはハーグ協定適用外ですし、国際法上も扱いが難しい組織のようです。
もちろんISやアルカイダの犯罪自体は止めなければならないでしょうが、アメリカに歯向かう者は
テロリストというのも限界に思えます。
ロボット兵器に関する話も、色々考えされます。
ただし、この本には、筆者の解決案は提示されません。

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暇な同人活動をしている大学生 シノタロスが、オリキャラや葉の話などをするブログです 

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